著者:稲葉真弓
サイズ:A5判 / 上製本 / カバー装 / 208ページ
タイトルに「連作・志摩」とあるのは、詩編の多くが志摩半島に関するものであり、そこでの生活が基になっているからである。年中柔らかな光に覆われた半島の隅々を、目に見えないものたち、掴み得ないものたちが絶えず通り過ぎる。その瞬間、光はなにか生き生きした、そして艶めかしいものとなって私の体にまといつく。土地の光や空気は私にとって、半島でのもうひとつの衣服のようなものであった。その衣服を着てこの詩集と向き合うとき、半島の鳥の羽ばたき、小さな植物たちも一緒に輝く。なんといっても、いとしく、うれしい詩集となった。
※後記より
稲葉真弓(いなば まゆみ)
1950年、愛知県生まれ。詩集に2002年「母音の川」。志摩半島の世界をテーマとした作品に、09年「海(み)松(る)」(川端康成文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞)、11年「半島へ」(谷崎潤一郎賞、中日文化賞、親鸞賞)等がある。ほかの主な作品に「蒼い影の傷みを」(女流新人賞)「ホテル・ザンビア」(作品賞)「エンドレス・ワルツ」(女流文学賞)「声の娼婦」(平林たい子文学賞)等。